Iの悲劇、最後まで簑石が読めなかった。

米澤穂信の小説。昔に氷菓を読んでなんだかラノベ的な設定小説だなと思っていた。

なのでなんとなく、軽い上滑りな話かなと思いながら読み始めた。

今から思いっきりネタバレを書く。なぜなら僕のためのブログだから。

舞台は過疎で人が全くいなくなった村、簑石。そこに市肝入りのプロジェクトとして外から人を住まわせるIターンプロジェクトが始まる。産業のない田舎に家を残し去っていった住人とそこに住みたい人を繋ぎ、住ませる。住むにあたってのトラブルはまずは役所に相談し、対応する。そんな計画。

主人公はそこそこ優秀なやれやれ男子、万願寺。相棒はとにかく明るい新人女子、上司は何もしない系の課長、その3人チームの蘇り課が活躍し、Iターンプロジェクトに四苦八苦するお話である。

話は何人かの住人が簑石にやってきてはなんらかのトラブルで去っていくまでがセットで、それが章だっている。その中で主人公が奔走し、翻弄され、新人女子が適当で、課長がなぜか最後に出てきて締める。

田舎ののどかさを夢見てやってくる住人の夢は人それぞれで、現実とのギャップに対する対応も人それぞれである。その対応は少し胸がキュッとすることが多い。

ヘリコプターのラジコンの音にうんざりした小さな子供がいる3人家族は夜な夜な音楽を爆音で流して対応する。逆にその音楽にうんざりしてラジコン太郎は爆音家族の家に火をつける。その裏でもしかしたらその小さな子供はネグレクトなのかもしれない描写もある。

都会の汚染された空気で呼吸器系の疾患が悪くなり、引っ越してきた子供が、同じく引っ越してきた本好きのおじさんと仲良くなる。しかし冒険好きで動き回れるようになった少年はおじさんの家で本が関わる事故にあう。

不幸が重なった青年が妻と一緒にやってきた家には小さな仏像があった。その仏像はやや有名な人が彫ったもので、その存在を知ったちょっと強欲なおじさんが仏像による観光事業を試みる。しかし青年は不運が重なっていた中で会えた仏像に運命を感じ、次の所有者に渡すまで無事に管理することを決意していたため、強欲なおじさんには渡さない。としていたがうっかり盗まれてしまう。おじさんは鑑定に出したかっただけだが、うっかり盗まれたのは妻がおじさんに仏像を見学させた時だったようだ。青年は妻が盗られたことを自責せず、おじさんから取り返す方法として主人公達を巻き込んだ作戦に打って出る。

そんなこんなしているうちに結局新人女子と課長が実はIターンプロジェクトの成功を阻止するために動いていたことが最後にわかる。理由としてはそんなところにお金をかけるなら市民に対しての福利厚生などをしっかりするべきだ、という世知辛いものだ。

途中で主人公と都会でエンジニアで働いている弟の会話だけの章がある。そこでは弟が主人公に田舎の生活を支える税金が都会から出ており、そんな先のない場所での暮らしに意味があるのか、と問い詰めるシーンがある。

富の分配って考えれば考えるほど難しい。確かに生きるために金がいる。やりたいことがあれば余計に金がいる。そんな時に自分にとっては努力していないように見える人たちにそれに見合っていないお金が流れているのをみるととてもやるせなくなる。しかしそのようなある程度の補償がないとおそらく生活のために犯罪をしなければいけない人達が出てくるだろうし、その補償で回っている経済も止まってしまうだろうし、必要なのだろう。

ここでTwitterで見つけた悲しいツイートを紹介しよう。

彼が留学するかはわからない。留学は結局いろんな運がないとできない。それに向けて、うまくいってることもあって、一方でうまくいっていないこともあって、それら含んで自分なりに努力しているだろう。マルチタスクが苦手だったが少しずつ色々しているらしい。突き抜けるためには一本集中!パターンと悩むこともあるけど、目標は突き抜けることではなく、進むことなのでこのままでよしとしましょうなんて言いながら。

この主人公は優秀で、出世を目指している。しかしなんだかんだ人が好きで、人の役に立つ役所仕事に誇りを持っている。だからIターンプロジェクトに参加した変な人たちにやれやれ言いながら対応する。でも最後に一緒に働いていた二人は別方向を向いていたことを知る。

主人公はその人それぞれのそれなりの現実と折り合いをつけた、しかしその中でもできるだけ希望、というか夢を追える生活を提供しようともがく。でも新人女子と課長はその田舎での夢を消す方向に細工をし続けていた。どちらも正義なだけにとても悲しい。僕はどちらかというと夢見がちで、その夢を応援してほしいし、夢を応援したいと思っているので主人公側であるが、現実的には新人女子達の考え方も必要とわかっている。この小説はなかなかいい軸の話であった。

結局簑石はなんて読むかわからないし、今回もコピペしたのだが、米澤穂信の本はこれから読んでいこうかと思った、なんなら米澤穂信もコピペだ。

そういえば今日「生協」という字が書けなかった。留学とかお金とかそんなレベルじゃない。あと、設定小説って何?

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