胃酸を抑えると慢性骨髄性白血病の患者さんには良いのではないか?スプリセルの続け方

どーも、鋼の錬金術師をAmazonプライムで見始めてしまってます、ちゃんまんです。

飲み過ぎると朝のむかつきが出てきちゃいます。

逆流性食道炎です。

リスクは食べ過ぎ飲み過ぎ太り過ぎです。

全てに当てはまります!良く飲み、良く食べ、良く太ってます!よっしゃ!

ということで今日はこんな論文。

ダサチニブで治療中の慢性骨髄性白血病におけるPPIもしくはH2blockerの影響

Influence of proton pump inhibitors and H2-receptor antagonists on the efficacy and safety of dasatinib in chronic myeloid leukemia patients.

PMID: 32152877

慢性骨髄性白血病(CML)は以前は不治の病でしたが現在はイマチニブ、ダサチニブ、ポナチニブなどの薬を飲み続ける事で健常人とほぼ同等の寿命を得られるくらい、予後が改善した病気です。

また、PPIやH2blockerは胃酸抑制剤です。化学療法などをしている場合、ストレス性胃潰瘍を発症する恐れがあり、予防目的に内服されていることが多いです。

本来、ダサチニブは胃酸抑制剤によって血中濃度が下がってしまってしまうとされています。しかしその臨床経過はあまり知られていません。

そこでCMLに対してダサチニブを内服している患者さんを対象に胃酸抑制剤の飲んでいる人と飲んでいない人の成績を比べてみました。

結果は以下。

あら、ダサチニブの血中濃度が落ちているはずの胃酸抑制剤併用群の方が成績が良さそうです。

なぜでしょう。

これは次の治療に行く人が増えると割合が下がっていくグラフです。つまり、ダサチニブのみの群はどんどん次の治療に行っているのに対して胃酸抑制剤を併用している群は次の治療に移行していないということを表しています。

CMLにおいて治療成績は基本的に治療が継続できるかどうかによります。なので患者さんのアドヒアランス、つまり内服遵守が大事とも言われています。内服率が90%以下になってしまうと成績が落ちてしまうくらい内服継続が大事と言われています。

つまり、胃酸抑制剤を併用すると治療を継続できているので成績が良いということがわかります。

ではなぜ続けられないのでしょう。

つまり続けれない人が多いということです。基本的にはダサチニブの副作用なようです。血球減少などが主です。今回症例数が少ないのでどの副作用が続けられない原因となっているかは明らかにはなっていません。

なのでこの論文の言いたいことは

胃酸抑制剤を飲んだ方が血中濃度が抑えられ

副作用発現が少なくなり

ダサチニブ継続ができ

成績がよかった。

という事となります。

ほんまかと?

血中濃度が実際どうであったかはわかりませんし、症例数も少ないです。また、血中濃度へ影響を与えるCYP3A4の遺伝子変異との相関が分かっていません。

と、論文にも書かれています。

個人的には胃酸抑制剤併用群では初期投与量が少ないというように見えるのが原因であるような印象です。つまり我々は副作用が出ないようにダサチニブの量を慎重に調節するということですね。がんばります。

癌である慢性骨髄性白血病を抑え続けるにはダサチニブなどの治療薬を飲み続けなければいけない、何かを得るためには対価を払わなければならない。等価交換だ。

と、言いたいところですが、CMLは克服すべき癌であり、患者さんにそのような負担を強い続けることは許されません。2割程度の方はどこかで薬を止めることができますが十分ではありません。

なんとかCMLを征服できる日は来るのでしょうか。それは誰にもわかりませんが僕は来ると信じています。信じることに対価は要りません。

悪性リンパ腫におけるPET-CTの新たな3つの評価法–MTV、TGL、MH–

どーも、ビール戦士からハイボール使いに転職してしまいそうな、ちゃんまんです。

今回はPET-CTについてです。

PET-CTとはFDGという光るブドウ糖を注射し、全身のCTと掛け合わせ癌の病変部位をあぶり出すという検査です。

癌細胞など増殖が盛んな細胞はブドウ糖をエネルギー源にしていることを利用してます。

ただし炎症を起こしている白血球もブドウ糖をエネルギー源にしているので肺炎などの感染症との区別がつかないのが難点です。また、通常でもブドウ糖をエネルギー源としている脳や心臓も光って見えてしまいますので注意が必要です。

PET-CTにより大きくなっていない癌でも病変の評価ができますし、CTではわからない浸潤臓器もわかります。

また、癌の広がりを把握することにとても役に立ちます。

リンパ腫においてはステージの評価には欠かせません。

そして最近、新たに3つの評価方法が出てきています。

MTV、TGL、MH

聴き慣れない略語ですね。それぞれ簡単に説明します。

①Metabolic Tumor Volume:MTV

光っている体積の値を算出します。ブドウ糖が多く使われている場所は強く光ります。その光の強さはSUVという値で表されます。MTVは一定のSUV以上の部位の体積を算出します。閾値は癌の種類によって違うみたいです。腫瘍量を表しています。

②Total Legion Glycolysis:TLG

MTV に平均 SUV をかけて計算します。腫瘍の代謝量を表すとされています。

③Metabolic Heterogeneity:MH

光っている部位の中で光り方が弱い部分がないかを表します。計算方法は難解ですが、均一性を表しています。値が高ければ腫瘍内での活動性は高く、値が低ければ活動性が高い細胞は一部であると考えます。光り方が弱い部分は壊死などを反映していると考えます。

Blood (2018) 132 (2): 179–186.

PET-CTで光っているといっても光り方やその分布によって捉え方が変わるということです。

つまり例えるならサッカーでうまいFWがいるとします。そのFWがデカくてうまいのか、速くうまいのか、それともキックが正確でうまいのか、といった感じでしょうか。ひとくちにうまいといっても色々な側面があるということです。

ここで論文紹介

スイスのSAKK38/07というびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)を対象としたstudyを別の角度からretrospectiveに見直した報告です。もともとは21日毎に実施するRCHOPを14日毎にすると成績が良くなると期待したが結局は変わらなかった、というstudyです。

なので患者はRCHOP14で治療したDLBCLの方。初診時のPETを使用しMTVとMHを組み合わして予後不良群を見つけよう、というstudyです。

結果は以下。

Blood Adv (2020) 4 (6): 1082–1092.

MTVが多くとMHが高ければ有意に予後は不良です。逆にMTVが少ない、もしくはMHが低ければ予後は比較的良好である、という結果です。

つまりデカいだけのFW、速いだけのFWならなんとかなるがデカくて速ければ太刀打ちできない、ということです。

本当にそうなのでしょうか。

この結果からはデカくて早いFWには通常のDFでは太刀打ちできないということを表しています。つまりこちらももっと強いDFを投入すれば勝ち目はあるということです。

ただ、どのようなDFを投入すれば良いのかはまだ分かっていません。つまり強い化学療法をするのか、別の抗癌剤の組み合わせにするのかなどは今後の検討課題となります。

このように研究とは

予後不良因子を見つけて

新たな戦略を立てて

救える患者さんを増やす

ことが繰り返されています。

我々はその大きな流れを構成している一部であり、その大きな流れは巡り巡って我々の元に戻ってきます。つまり、僕はまさに自動流しそうめん機に投入されたそうめんなのですね。

違うか。

春一番が二発ー無顆粒球症と発熱性好中球減少症ー

どーも、持ち前の明るさを活かしたい、ちゃんまんです。

世間は新型コロナウイルスで持ちきり、家での待機が余儀なくされており、気分も閉塞気味ですね。

ここで先日僕が体験した春のそよ風についてのお話です。

白血球 低男さん(仮名)いう60歳台男性の白血球が300/μLということで血液内科へ紹介となりました。白血球数の正常値は3000-8000/μLであり、かなり少ないです。

普段、白血球はウイルス、細菌、真菌(カビ)などと戦っています。300/μLまで減ってしまうと感染症にかかりやすくなってしまいます。白血球には種類がありますが、細菌と戦うのは主に好中球です。好中球が少ないと、具体的には500/μL以下の場合は、細菌感染を発症してしまうと重篤になる場合が多いです。なので好中球が少ない状態で発熱していたら、点滴の抗生剤が投与されることが多いです。

具体的には好中球500/μL以下+37.5度以上の発熱=発熱性好中球減少症と言います。白血球が少ないだけでは特に大きな問題はないですが、熱が出てしまうと速やかな抗生剤治療が必要です。

白血球低男さんの好中球は100/μLで38度台の発熱を認めており、発熱性好中球減少症として抗生剤投与を入院となりました。と同時に白血球が減ってしまった原因検索をすることとなりました。

白血球はなぜ減ってしまったのでしょう。

白血球は骨髄、つまり骨の中で造られています。なので白血球が減ってしまった時はまず骨髄できちんと白血球が造られているかを確認しなければいけません。骨髄では赤血球と血小板も同時に作られます。

骨髄で白血球が作られない状況とは、例えば白血病細胞が骨髄を占拠して白血球を作ることを邪魔している場合です。白血病細胞以外にも胃がんなどの癌細胞が骨髄を占拠している場合も同じです。

もしくは何らかの原因で白血球が作れなくなる病態がある場合もあります。再生不良性貧血などがそうです。貧血という名前なのに白血球が減るの?と思われるかもしれませんが、実は再生不良性貧血は白血球、赤血球、血小板が減ってしまう病気です。またいつか紹介したいと思います。

なので骨髄検査を実施しました。

骨髄検査では分化(成長)段階の白血球が多数認められ、白血病細胞などはいませんでした。そして再生不良性貧血のように血球がほとんど見当たらない、ということもありませんでした。

どういうことでしょう?

こういう時は経過が重要です。白血球低男さんは2ヶ月前にくも膜下出血を発症されており、けいれん予防目的にカルバマゼピンを内服していました。そしてよくよく採血結果などを見てみるとカルバマゼピンを内服して4週間後あたりから徐々に白血球数は少なくなっていました。

そう、薬剤性無顆粒球症です。

メルカゾールなどが有名ですがカルバマゼピンもよく原因となります。

治療は原因薬物の中止です。

白血球低男さんのカルバマゼピンは予防投与であったこともありそのまま中止することにしました。すると白血球数は回復し、抗生剤により発熱も3日ほどで治りました。

そろそろ退院の日程を相談しようと訪室したところ白血球低男さんが

「先生も見てくださいよ、この部屋からの景色はいいですよ」

と窓際へ歩いて行ったのでその後ろについていくと

!?

びっくりしました。

そしてびっくりするあまりに

春一番が二発、病室を駆け抜けて行きました。

白血球低男さんは気付いていなかったようです。僕のおならに、そしておそらく自分のおならに。

覚悟の話、駄文–イギリス首相ジョンソンの新型コロナウイルス対策–

どーも、現在22時ですが昨日飲みすぎたためまだ二日酔い、ちゃんまんです。

新型コロナウイルス、大変ですね。みなさまの健康をお祈りします。

ここでイギリスの首相、ジョンソンさんのスピーチを聞いてみましょう。

英国放送協会(British Broadcasting Corporation:BBC)の日本版ホームページからの引用です。だいたい10分くらいです。

https://www.bbc.com/japanese/video-52013808

なんかすごいですね。

見えない殺人鬼に対してみんなで戦おう。2人以上の会合は禁止、警察の出動も辞さない。でも1日1回は健康のために外出を許可します。

どのような方針が正しいだとかは僕はわからないですし、日本がどうすべきかなんてはこのブログでいうつもりはありません。

この動画をみて感じたのはすごい覚悟です。いわゆる凄みが伝わってきます。

現在の悲惨な状況に対して、犠牲を覚悟で乗り越えようとする意志を感じました。

覚悟を持って物事をやり遂げる。刺激をもらいました。

僕はこの3月で3年間働いた病院を辞めて4月から大学院へ進みます。その送別会が昨日ありました。状況が状況なので僕含めてレジデント3人と研修医1人の4人で行ってくれました。

美味しい和食の1軒目、ワインバー的な2軒目、食べログの評価は両方3.5程度でした。素晴らしいチョイスです。最後ということでたっくさん飲みました。ビール、ハイボール、ワイン、ハイボール、、、最後の飲み会ということを噛み締めて覚悟を持って飲みました。そしてがっつり二日酔いです。

そんなのは覚悟では無いですね。

はい、とりとめのない話ではありますが本日はここらへんで!