どーも、去年の夏服が入りません。チャンマンです。
先日ALL(急性リンパ性白血病)の研究会に行ってきました。CAR-Tについてのお話がメインであり、ちょっと巷で話題となっておりさわりだけでも説明していきます。
CAR-T(カーティ)とは
Chimeric Antigen Receptor-Modified T cellsの略でカーティと呼ばれています。おそらく血液内科領域において、ここ数年で最も熱く、さらにあと数年は熱いままであろうトピックです。
先日ノバルティスから出されたキムリア®️が33,493,407円で薬価申請されたことで話題になった治療法です。すごい額ですね。
国内初のCAR-T細胞療法・キムリアが薬価収載 新薬11製品もhttps://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=67510
どのような治療?
方法は以下です。
1,患者さんからT細胞を採取
2,半端ない技術でそのT細胞をガン細胞を攻撃するように改造
3,改造T細胞を患者さんに戻す
4,改造T細胞がガン細胞をやっつける!
ノバルティスホームページにも解説されています。
https://www.kymriah.jp/pt/car_t/index.html
いわゆる細胞療法です。
効果は凄まじいです。従来の治療法では4割程度しか助からない再発ALL(急性リンパ性白血病)の患者さんが8割くらいに効果があるとされています。
ただ、その長期予後(治るかどうか)については議論のあるところです。
Emily Whiteheadという少女
Emily Whiteheadという少女がいます。Googleで画像検索をすると多数の彼女の写真が出てきます。
可愛いですね。
有名な子役タレントですか?
いいえ違います。
彼女は何を隠そうCAR-T療法の恩恵を受けた一人です。
7歳で白血病と診断され寛解を獲得したが再発する、というのを2回も繰り返し化学療法のみでの治癒は困難と判断されCAR-Tへの臨床治験への参加を決意しました。治療は奏効し、現在CAR-Tの威力を表すために再発無しです!とのボードを毎年掲げて白血病患者さんへ希望を与えています。
ちなみにこの論文のPatient1です。
N Engl J Med 2013; 368:1509-1518
CAR-T療法の威力は繰り返しになりますが凄まじいです。白血病以外のガンにおいても注目されています。おそらく向こう数年かはガン治療のメインストームとなり、世界中で盛り上がっていくでしょう。しかし薬価からもわかるように莫大な研究費が必要となります。彼女はガンサバイバーとして世界の患者のために戦ってくれています。本当に尊敬します。可愛いなんて月並みな感想を言った自分が恥ずかしいです。でも可愛いですよね。
副作用について
効果が凄まじいですが副作用も凄まじいとされています。
この図はCAR-T療法において副作用が起こる可能性のある臓器の説明です。
Blood 2016 127:3321-3330
全部やん?全臓器やん?
いろいろなところでいろいろなことが起こりますが主に2つが問題とされています。
①サイトカイン放出症候群(Cytokine release Syndrome:CRS)
②神経毒性
・サイトカイン放出症候群
改造T細胞が体内で活性化し、標的となるがん細胞への攻撃が起こります。その活性化を促す目的で出される体内にサイトカインが過剰に放出されてしまいます。T細胞は元気になるのですがそれがあまりに元気になり、他の細胞も巻き込んで発熱や血圧低下、胸水などによる呼吸不全が起こってしまいます。試験にもよりますが発症頻度は20%〜100%(!!)となっています。初期の試験においては半数の患者さんがICUでの循環・呼吸管理が必要となってしまっています。
重症度をまとめてみました。(以前に発表したスライドです。色味どうです?)
サイトカインであるIL6が原因とされており、ヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体であるトシリズマブの投与が必要となります。タイミングとしてはGrade3程度が目安なようです。具体的には5L/min以上の酸素投与、もしくは昇圧剤が2剤以上必要な場合です。ただ、トシリズマブの投与は抗腫瘍効果が落ちてしまうという懸念がありましたが最近の報告では抗腫瘍効果は落ちないんじゃないかという意見が主流なようです。なのでややトシリズマブの早めの使用が推奨されつつあります。さらに効果発現が乏しい場合はステロイドの使用も積極的に考えます。12時間以内に効かない場合は使ってみることを考えるそうです。
・神経毒性
頭痛、幻覚、麻痺、不眠症、振戦、めまい、傾眠、不安と症状は多彩です。基本的に可逆的とされており原因としては実はCAR-T特有というよりCD19との関連が疑われています。
治癒?
今現在はCAR-T療法単独で治癒にいたるのかもしくはやはり同種造血幹細胞移植が必要かどうかははっきりしません。CAR-T療法実施前の微小残存病変(MRD)が陰性な場合は移植が必要でないかもとの意見が多そうです。
品質の向上や再発に対する戦略(主にCD19エスケープに対する)によってさらなる効果が望めそうです。
いったん以上です。とりあえずおさわりだけです。また世代の話や品質の話など基礎的なお話もどこかでできればと考えています。
何か気になるところなどあればお気軽にコメントなど下さいませ。