DLBCLではR-CHOPがDA-EPOCH-Rより優れていることを証明してしまった、ていう話

どーも、職業は大学院生、ちゃんまんです。

そうなんです。今30歳過ぎなんですけど血液内科医として働きつつも学生として学費を納めているのです。ただ、まだ学生らしい勉強(研究)はしていないので、時間が余っているのです。

ただ、ちょうど奥さん(かわいい)が妊娠しましてその手伝いができたのでよしとしてます。

今日はこれ。

CHOP as Frontline Therapy for Diffuse Large B-Cell Lymphoma: Clinical Outcomes of the Phase III Intergroup Trial Alliance/CALGB 50303

J Clin Oncol 37:1790-1799.

アメリカのAlliance/CALGBからDLBCLに対してR-CHOPとDA-EPOCH-Rの治療成績の比較を第三相試験で行った研究です。

DLBCLはR-CHOPで治る、といっても何割かが難治性です。そこをなんとかするために、使う抗がん剤は似ていますが①持続であること②投与量を個人ごとにあげることが出来る、という特徴のDA-EPOCH-Rに白羽の矢が立ちました。

いくつかの先行研究でR-CHOPよりいいかも、という結果もありまして万を辞して第三相が始まりました。

しかし結局題名の通りDA-EPOCH-RではRCHOPに勝てませんでした。

では、以下内容です。

患者

対象は2005年-2013年にStageⅡ以上のDLBCLと診断された方、PMBLとIVLも含まれていました。マルクや病理組織でindolentリンパ腫が検出された場合は除外されています。CNS病変,HIV関連も除外されています。

491人が解析対象となっています。それらをRCHOP群とDA-EPOCH-R群に1:1に分けられました。ちなみに節外病変が2つ以上、骨髄浸潤あり、LDH上昇例はCNS予防としてMTXの髄注を実施されています。

全体でステージ3/4が74%を占めており、19%が70歳以上、2.6%が80歳以上でした。

MYCとかについて

MYCのFISHは249(50.7%)で実施されその中でダブルヒットと判明した3例は除外されました。

ダブルエクスプレッサーかどうかはMYC>40%, BCL2>50%で定義し、270人検査され42人が陽性だったようです。

結果

PFSは同等でありました。

 R-CHOP(n=250)DA-EPOCH-R(n=241)
完遂率88%82%
ORR88%86.70%
2yPFS75.50%78.90%
3yPFS72%75.80%
5yPFS66%68%
CNS再発4%3.30%

こうみると1年くらいでの再発が多くてそれ以降はなだらかに再発していくという感じでしょうか。再発時期による特徴などは気になるところです。

じゃあOSはどうだ?

見事に同じような曲線ですね。解析が出た際の落胆が聞こえてくるようです。

合併症はこちら。

 R-CHOP(n=250)DA-EPOCH-R(n=241)p
grade3-5 event78.20%98.20%<0.001
grade3-4血液毒性73.70%97.50%<0.001
grade3-4非血液毒性43.20%72.20%<0.001
二次生白血病1人2人

まーそうでしょうね。EPOCH結構強いですもん。

ちなみにサブグループでの解析も行われていますが、どのグループもDA-EPOCH-Rの優位性を証明できませんでした。

IPI scoreが悪い人たちはもしかしたらいいかも?いいえ統計学的には同じです。

といったところでRCHOPには勝てず、でした。discussionでは以前のstudyではS2-4のDLBCLorPMBLでは3yPFSが61%であったことを考えると今回のコホートは全体的に良好な患者が多かったのであろうか、などありました。

読後

やはりDLBCLにおいてはRCHOPに勝つレジメンを探すというより、RCHOPで治らない群を探す、ということが重要なのでしょう。あとはRCHOPより毒性が低いが効果が同等なレジメンもしくは薬剤の検索ですかね。

患者数が血液疾患の中では多いだけにそのような研究が待たれるところです。なんならそのような研究をしたいところです。

悪性リンパ腫におけるPET-CTの新たな3つの評価法–MTV、TGL、MH–

どーも、ビール戦士からハイボール使いに転職してしまいそうな、ちゃんまんです。

今回はPET-CTについてです。

PET-CTとはFDGという光るブドウ糖を注射し、全身のCTと掛け合わせ癌の病変部位をあぶり出すという検査です。

癌細胞など増殖が盛んな細胞はブドウ糖をエネルギー源にしていることを利用してます。

ただし炎症を起こしている白血球もブドウ糖をエネルギー源にしているので肺炎などの感染症との区別がつかないのが難点です。また、通常でもブドウ糖をエネルギー源としている脳や心臓も光って見えてしまいますので注意が必要です。

PET-CTにより大きくなっていない癌でも病変の評価ができますし、CTではわからない浸潤臓器もわかります。

また、癌の広がりを把握することにとても役に立ちます。

リンパ腫においてはステージの評価には欠かせません。

そして最近、新たに3つの評価方法が出てきています。

MTV、TGL、MH

聴き慣れない略語ですね。それぞれ簡単に説明します。

①Metabolic Tumor Volume:MTV

光っている体積の値を算出します。ブドウ糖が多く使われている場所は強く光ります。その光の強さはSUVという値で表されます。MTVは一定のSUV以上の部位の体積を算出します。閾値は癌の種類によって違うみたいです。腫瘍量を表しています。

②Total Legion Glycolysis:TLG

MTV に平均 SUV をかけて計算します。腫瘍の代謝量を表すとされています。

③Metabolic Heterogeneity:MH

光っている部位の中で光り方が弱い部分がないかを表します。計算方法は難解ですが、均一性を表しています。値が高ければ腫瘍内での活動性は高く、値が低ければ活動性が高い細胞は一部であると考えます。光り方が弱い部分は壊死などを反映していると考えます。

Blood (2018) 132 (2): 179–186.

PET-CTで光っているといっても光り方やその分布によって捉え方が変わるということです。

つまり例えるならサッカーでうまいFWがいるとします。そのFWがデカくてうまいのか、速くうまいのか、それともキックが正確でうまいのか、といった感じでしょうか。ひとくちにうまいといっても色々な側面があるということです。

ここで論文紹介

スイスのSAKK38/07というびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)を対象としたstudyを別の角度からretrospectiveに見直した報告です。もともとは21日毎に実施するRCHOPを14日毎にすると成績が良くなると期待したが結局は変わらなかった、というstudyです。

なので患者はRCHOP14で治療したDLBCLの方。初診時のPETを使用しMTVとMHを組み合わして予後不良群を見つけよう、というstudyです。

結果は以下。

Blood Adv (2020) 4 (6): 1082–1092.

MTVが多くとMHが高ければ有意に予後は不良です。逆にMTVが少ない、もしくはMHが低ければ予後は比較的良好である、という結果です。

つまりデカいだけのFW、速いだけのFWならなんとかなるがデカくて速ければ太刀打ちできない、ということです。

本当にそうなのでしょうか。

この結果からはデカくて早いFWには通常のDFでは太刀打ちできないということを表しています。つまりこちらももっと強いDFを投入すれば勝ち目はあるということです。

ただ、どのようなDFを投入すれば良いのかはまだ分かっていません。つまり強い化学療法をするのか、別の抗癌剤の組み合わせにするのかなどは今後の検討課題となります。

このように研究とは

予後不良因子を見つけて

新たな戦略を立てて

救える患者さんを増やす

ことが繰り返されています。

我々はその大きな流れを構成している一部であり、その大きな流れは巡り巡って我々の元に戻ってきます。つまり、僕はまさに自動流しそうめん機に投入されたそうめんなのですね。

違うか。