骨髄腫学会2023は浜松町コンベンショナルホールで開催されていた。

先日、骨髄腫学会2023に参加した。

https://www.jsm2023.org/

最初は会場が浜松町コンベンショナルセンターだったので、静岡での開催と思っていたけど東京でした。

コンベンションて

基礎実験の演題が採用されたので参加してみました。大きな感想としては3つです。

1、骨髄腫の研究を本気でしている施設が日本にいることが実感できて、なんとなく心強く思った。

最近ボスから自分のテーマを基礎でやってもいい、とお達しがきた。色々考えていて、まだテーマ自体は決めれていないが、疾患は現在の実験のテーマでもある、骨髄腫についての研究をしたいと思っている。

今まで臨床研究でDLBCL, MDSを扱って研究として形にしてきた。その疾患を選んだのは研究したかったというより、患者数が多く臨床研究として形にしやすそうだから、という部分が大きかった。もちろん、形にした研究は知りたいテーマではあったがきっかけはnが多くてやりやすそうだな、って感じでした。別に悪いとも思ってませんが、ピュアではない。

それでいうと今回、骨髄腫をテーマに選んだのも今までやっているから、今までそれなりに勉強したから形にするのもやりやすいのではないか、という理由なので僕のテーマの決め方ってやりやすそうなのから手を出すというスタイルなのでしょう。

とにかく今後、ある程度の時間を骨髄腫の研究に費やすことになると思いはじめた時に参加した学会で、日本でこれだけ骨髄腫についての研究を真剣にしているところがあるのを実際に見て、なんとなく心強く感じました。贅沢を言うとちょっと少ないような気もしたが、これが日本の現状なのでしょう。

今後テーマを決めてやって行くうちに、わからないことや迷うようなことが出てきたらボスはもちろん、他施設の人たちに聞けちゃうのだなと思ったのでした。

学会の帰りの新幹線はボスと隣どうしで帰ったのですが、

「テーマについて迷っていて、1q gain他の血液始めとした癌にないのが気になっていて、その関連でできないかと思っている」

と相談したところ

「確かに面白いけど今研究室で色々お蔵入りしているものとかからやる方が方法論もあったりしていいんじゃない?」

と言う答えとともに色んなお蔵に入ったものたちを見せてくれた。

僕はコネクティングドットを信じていて、そういう観点で探していたはずなのに、自分のオリジナルを出そうとしていたな、と反省しました。別に反省することでもないですが、改めてその方向にしてくれたボスには感謝です。

2、MRさんが結構多い。

学会は5/26(金)-5/28(日)までで、僕は土曜日の朝一番に会場に入りました。参加登録を忘れていたのでその場でweb経由で登録、そのせいで開会式は出れませんでした。とほほ。

ちなみに土曜日の夜にボスと仲が良い先生(有名人)とその施設の何人かと我々の教室の何人かで飲み会があると決まっていました。僕は翌日に発表だったのでスーツは温存してその飲み会のために私服で会に参加しました。そうすると参加者にはMRさんが多くて、さらに発表している若手以外はほとんどが上の人だと言うこともあり、参加者はバシッとスーツ、私服はおそらく僕1人でした。とほほ(パート2)

次からはもう学会はスーツスタイルを心に誓いました。

楽しそう

3、練習はやっぱり30回くらいはした方がいい。

発表日までの練習はおそらく20回程度でした。それもあってか結構噛んでしまいましたし、(webで奥さんが見た感想、、)マイクも遠くて少し聞き取りにくかったみたいです。

前に書いたかもしれませんが、確かに30回くらいの練習はあった方がいいと思っています。(プレゼン、練習回数、で検索すると100回とか出てきますが、僕は30回程度で大丈夫と思います。プレゼンの重要さにもよるかもしれませんが。)

今回はスライドをGW明けにはボスに渡したのが返ってきていたのであとは少しブラッシュアップしてしゃべる内容を考えるだけ、という状態だったのですが、重い腰が上がったのが発表の3日前くらいでした。。。。20回くらいでも大丈夫と思っていましたが、やっぱり現実は非常である (答え③)。これを糧に次のステップを目指します。

前述のテーマ選びとその数日前にあった抄読会に力を入れ過ぎたことが敗因です。そして力を入れすぎた抄読会では勢いが強すぎてカンファのファシリの先生から苦言をもらってしまいました。面白いことをわかりやすく伝えることを重要と思っていたのにそんなコメントをもらうような発表をしてしまって大反省です。

大学院生の発表に苦言を入れるのはあかん、とかしっかり勉強したからええやん、とか合理化はできますが、ここは反省を多めで次に繋げたいと思います。

4、その他トリビア

せっかくなので今回学会に行って色々メモっていますのでその復習がてら色々メモっときます。

ちょっとぼかしています
  • del 17pについて

55%以上などのカットオフがあるみたい、30%でも良いかもというデータもあるみたいです。欧米のデータなので骨髄検体をセレクションしたあとなので、単純に日本のデータにはできません。

del17pだけではなく、TP53変異が合併するとさらに悪くなる。違いがあります。CLLでも言われてますよね。

さらにこれらはNGSによる解析であり、FISHで、しかもセレクションをしていない日本のデータは弱い事態になってそうです。

あと、再発難治で多い理由としては獲得していくというより元から少数存在しているクローンがselectionで拡大していくの派が多い印象でした。治療ターゲットとしてはその悪くなるクローンを最初に根絶するのがいい戦略なのかなと思いました。Lv1の勇者を最初の村でやっつける、みたいな。

  • メンテナンス

IFM/DFCI 2009などから基本的にメンテナンスは必要で、ハイリスクはIxaで、スタンダードはLen、期間としては2年はとりあえず必要っていう感じでした。メンテナンスはほんまに必要かわからへんっていうニュアンスがなくなってきた印象です。

  • データサンプル

GSE136337というのを予後分析に使っている研究があってこれは使えるのかなあ。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE136337

  • トンネルナノチューブ (TNT)

ストローマ細胞から小さな管がでて、miRなど色々物質を送ったりしているらしい。長老的ミエローマニアの先生が聞きまくっていました。

https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v14/n12/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%90%E3%83%8A%E3%83%8E%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96/90179

ストローマ細胞にも関わらず相互作用に関する研究が多かったです。ちなみに使用するストローマとしては患者由来細胞が多いみたいです。

  • 低酸素

CD38が落ちるらしい。骨髄の環境は低酸素であり、実験系を考えても良いと思いました。

ちなみに1q gainでもCD38が落ちるみたいです。

  • 治療における高血圧の目標について

HFA-ICOSと言うのが腫瘍循環器領域で作られているみたいです。いろんなリスクで目標を考えるみたいです。

https://www.cancercalc.com/hfa-icos_cardio_oncology_risk_assessment.php

そんなところでしょうか。

ちなみにそろそろEHAですが、今になって演題出してwebで発表しといたらよかった。やっぱり発表することでしか得られないことって多い気がする。travel award落ちたからってやめたのを少し悔やんでます。ほんの少しですが。

今見返すとめちゃ落ち込んでる

振り返りは続く、JSH2022、もう2週間前か。

以前の上司から新たな自分の捉え方を指摘され、未来へと進むことを決意したちゃんまん、その行き先や如何に!?

二日目

普通に二日酔い、3日目はoralの発表が午前中だったので2日目の夜はセーブしようと心に決める。

モーニングセミナーは岡山大学の縁西先生のFLの話を聞いた。縁西先生はバンクーバーからダブルヒットシグニチャーを引っ提げて帰ってきたすごい人なのに、すごい人感が全くないのがすごい。そしてそのあとの遺伝子パネルのセッションで1人だけ背もたれにもたれていたもすごい。モーニングセミナーは主要環境中の細胞との相互作用のためのEZH2やCREBBPなどの話だった。MHCに関わる分子のスクリーニングでCREBBPが検出されていないことを質問したかったが自信がなくて後に個別に質問しに行ったらなんかうまく舌が回らなくて、変なやつみたいになったが快く答えてくれた。臨床検体であることや、統計学的な限界と答えてくれた。

実は僕は縁西先生の隠れファンだ。先生が日本に帰ってきてすぐに京都で研究会の講演にきてくれた。そこで僕はもう1人の講演した先生にトンチンカンな質問してしまった。多発性骨髄腫のMRDはIgHの部分を見ているが、サブクローンが多い骨髄腫においてそれはマーカーになるのか、といった質問だった気がする。IgHの部分はクロナリティの話なのでサブクローンは関係ないはずである。今はない講演会の後の懇親会で、教授直々にそんな解説を受けていた僕に縁西先生はそういうの大事ですよね、と言ってくれた。微妙に違うような気がするがそんなエピソードがあってから先生の隠れファンなのだ。

というより遠西先生だ。失礼極まりない。

その後STEP4の会場に行った。日本の若手が自分の研究のプレゼンをして、海外のコメンテーターが研究について、そしてプレゼンについてアドバイスをもらうセッションだった。テーマはAMLだった。2人とも女性でとてもうまく発表していた。1人はコメンテーターの先生からの質問に笑ってしまう癖があって、損をしているなと思った。笑ってしまうとヘラヘラしている感じがして、真剣にしていない感が出てしまっていた。自分もわからない時や困った時に笑ってしまうので気をつけようと思った。

その後はベネトクラックスの血中濃度の発表やMMにおけるMRIをまるまま機械学習にのせて予後予測に使うという発表を見た。機械学習の発表はガッツリ情報通信系の人が発表していた。脾臓が意外と予後と相関するというものだった。とても面白かったが、機械学習に放り込むデータがMRIだけというのは無理があるように感じた。例えば骨病変がないMMにおいては力が発揮できていないので、もっと広範囲にデータを入れたいところだが、そうすると今回の目玉の画像→分類がうまく使い無くなってしまう。その辺りはとても面白いように思うのだがどうだろう。今後の課題にしたい。

その後はニッチや分化の基礎といった今まで聞いてこなかったセッションに行ってみた。研究手法や、考え方がなんか掴めそうで掴めない感じ、成長が必要と感じた。来年に期待だ。

イブニングセミナーはリアルワールド研究の意義を聞いた。臨床試験には入れないような人たちの治療成績の検討はとても意義があるが、そのデータはレジストリや診療報酬データベースなどからしか取れない。ただ、このデータを取る作業がやたら面倒なので研究が進まないので、データに対する利便性を高める、という個人的に設定している課題には答えてくれなかった。どのようにデータベースを作成するかがブルーオーシャンと思うのだが、、、、これも今後の課題だ。

その日は同期と教授と3人でもつ鍋屋と居酒屋へ行った。たくさん話したような気もするし、何にも話していない気もする。心に留めるべき話があったようでなかったようでもある。翌日にプレゼンを控えていた僕は飲酒量をほどほどにしたつもりだった。しかしホテルに帰ってフロントにあったハンターハンターを読もうとしたが、全く頭に入ってこなかったので結構飲んでしまっていたのだろう。

3日目

朝はモーニングセミナーで筑波大学の坂田先生のT細胞リンパ腫の話を聞いて、自分の発表をした。英語のセッションだったので結構練習した。英語だったからではなかったが、プレゼンは50回練習するのが当たり前、という説をその通りだな、と思ったこともあって練習した。結局30回程度だった気もする。

https://note.com/dr_kano/n/ne033e8c4cff6

同期が見てくれたが、うまく喋れていたようだ。質問も座長をはじめ、その分野で今をときめく先生、数回前の学会会長を務めた先生、さらに同じ大学の一年上(元同学年)の東大に行った先生がしてくれて大盛り上がりだった。ある質問で僕もそこが不思議に思っている、という回答でウケたのが個人的に見どころだ。やっぱり僕は発表が好きなんだなと思った。発表というより自分のしたことをみんなとシェアするのが好きなのかなと思った。続けれたらと思う。

一応昼のAMLビートの話をきたが疲れてしまったので新幹線で帰宅した。お土産は1万5千円分、全て自宅用とした。

今回の学会は久しぶりの現地での出席だった。とても充実した3日間で、行かせてくれた家族には感謝だ。ベッド持ちに戻ってもいけるように研究は続けようと心に決めたちゃんまんであった。

振り返り、JSH2022、人に優しく自分に厳しく。

1週間前、僕は九州は博多にいた。今の時間はちょうど教授と同期と居酒屋で焼き鳥を食べていた。

JSH2022、いわゆる日血。今年は九州大学の赤司先生が会長で、福岡でハイブリッドでの開催となった。僕は1日目にポスター、3日目にoralで発表してきた。久しぶりの現地開催で参加できたのでレポート的なものを書いてみる。

1日目

朝の5時に出発、暗い中最寄りの駅まで歩いた。家族3人で。

学会参加の間、奥さんと娘が愛知県の実家に帰ることになり、出発を一緒にしたのだ。お父さんは学会へ、お母さんは実家へ。

そして新幹線で博多へ。せっかくなので同期と一緒に仲良く乗った。ここで、ハプニング。同期の分も新幹線のチケットをとったのだが、事前に僕だけ発券したと思っていたら、実は同期の分も発券されており、同期が博多駅の駅員さんにバチバチにキレ倒した後にそれに気がついた、という話。思い込みは怖いなと改めて実感。普通に許してくれた同期にも感謝。

そんなこんなで到着。

この学会での一つのテーマは機械学習だった。自分が少し勉強していて、その未来性を確信している手法がどのくらい今の日本の血液内科に浸透しているのかを実感することをテーマとした。演題でAIやmachine lerningでヒットしたのは5件程度だけであった。

1日目の午前中に2つの機械学習を使った演題があった。

ひとつはM2マクロファージを認識するために使ったもの、もうひとつはCML細胞をFCMで判定するものであった。どちらも画像認識をうまく使ったものであった。

あとベネトクラックスの血中濃度の発表も見た。中等度阻害のものを使った場合、100mgにしても濃度は高くなってそうだった。VEN+AZAに関しては色々話題があった。なんなら今回はVENだけでセッションが立つくらいだった。みんなが待っていたんだろう。よく言われるけどAMLって薬がなかったから効いたらならケモ→移植、ケモの内容はアントラサイクリン系+中当量キロサイド、ダメならMECやFLAGMなどETP足すか、大量キロサイド、それでもダメなら非寛解移植って感じでまさに修羅、ケモ地獄の血液内科だった。でもVEN+AZAが出てからは治癒目指す人にはマイルドな選択肢が増え、さらに移植ができないような高齢者にマイルドな治療ができるっていうのが本当に救われた感がある。患者もそうだが僕ら血液内科も救われたのかなと思う。治る可能性が低い人への強めケモはやっぱりしんどい。病棟スタッフ含めてみんなが疲弊してしまう。そんな心理があってか大流行りだったのだろう。

ランチョンはAMLのMRDを見た。考えればMMみたいにFCMで出来そうだ。AMLは再発時にクローンが変わるのが多いのがネックかと思ったら80-90%は検出できるみたいで、有用そうだった。

その後は会長公演とワイズマンというダンブルドアみたいな人の話を聞いた。白血病が分化後の細胞からではなく、幹細胞が出自だという概念には驚いた。それもあって分化の話は結構熱いのかと納得した。

午後にも一つ機械学習の発表があった。scRNAseqから機械学習でその段階の細胞集団が揺らいでいるかどうかを検出できる技術を使ったものだった。分化って奥が深い。

あと、biobank japanのデータを使ったgerm line と関連があるリンパ腫についての解析の発表も見た。こっそりテーマと思っている分野でまたじっくり考えてみたいと思った。

最後にポスターで発表した。発表したというかポスターの前に立っていただけ。Facebookにあげる用の写真を撮りに来た教授と、隣のポスターの人、昔我々の研究室でPhDを取って今は製薬会社で働いている人が話しかけてくれた。そして終了後にMRさんが数名話しかけてきた。コロナ禍で全く会っていないMRさんが僕のことを認識していて、話しかけてくれるのはすごい。どんな訓練を受けているのだろう。

夜は昔市中病院にいた時のボス、その同期、そして僕の同期の4人で居酒屋に行った。居酒屋で喋りながら飲むのが久しぶりで楽しかったし、やっぱり料理が美味しかった。

ボスの同期は製薬会社で働いていて、企業としての人の成長させ方の話は面白かった。というか、病院の医者はやっぱり教育や経営についての系統だった教育がなされていないので他の業種では当たり前ができていないのだろうな、というのを痛感した。ショックでもあった。知らないのって損やし搾取されているのではないかと思う。

あと、大学院2年目の時に辛かった話を聞いてくれて、それって自分がしょうもないミスをしている自分を許されへんから辛かったのではないか、というボスの考察が(ボスもそうだったみたい)とても自分の中にすっと入ってきて、なんだか気持ちが軽くなった気がした。

ちなみにコングレスバックは奥さんに色を聞いて、返信来るまで何個かのセッション聞いて、言われた色を取りにいったらなくなっていた。紺と水色のどちらかというチョイスだった。意外と他の血液内科の先生はセンスがあるのかと思った。そして奥さんもすごいなと思った。

ちょっと長くなり始めたのでここで区切る。