春一番が二発ー無顆粒球症と発熱性好中球減少症ー

どーも、持ち前の明るさを活かしたい、ちゃんまんです。

世間は新型コロナウイルスで持ちきり、家での待機が余儀なくされており、気分も閉塞気味ですね。

ここで先日僕が体験した春のそよ風についてのお話です。

白血球 低男さん(仮名)いう60歳台男性の白血球が300/μLということで血液内科へ紹介となりました。白血球数の正常値は3000-8000/μLであり、かなり少ないです。

普段、白血球はウイルス、細菌、真菌(カビ)などと戦っています。300/μLまで減ってしまうと感染症にかかりやすくなってしまいます。白血球には種類がありますが、細菌と戦うのは主に好中球です。好中球が少ないと、具体的には500/μL以下の場合は、細菌感染を発症してしまうと重篤になる場合が多いです。なので好中球が少ない状態で発熱していたら、点滴の抗生剤が投与されることが多いです。

具体的には好中球500/μL以下+37.5度以上の発熱=発熱性好中球減少症と言います。白血球が少ないだけでは特に大きな問題はないですが、熱が出てしまうと速やかな抗生剤治療が必要です。

白血球低男さんの好中球は100/μLで38度台の発熱を認めており、発熱性好中球減少症として抗生剤投与を入院となりました。と同時に白血球が減ってしまった原因検索をすることとなりました。

白血球はなぜ減ってしまったのでしょう。

白血球は骨髄、つまり骨の中で造られています。なので白血球が減ってしまった時はまず骨髄できちんと白血球が造られているかを確認しなければいけません。骨髄では赤血球と血小板も同時に作られます。

骨髄で白血球が作られない状況とは、例えば白血病細胞が骨髄を占拠して白血球を作ることを邪魔している場合です。白血病細胞以外にも胃がんなどの癌細胞が骨髄を占拠している場合も同じです。

もしくは何らかの原因で白血球が作れなくなる病態がある場合もあります。再生不良性貧血などがそうです。貧血という名前なのに白血球が減るの?と思われるかもしれませんが、実は再生不良性貧血は白血球、赤血球、血小板が減ってしまう病気です。またいつか紹介したいと思います。

なので骨髄検査を実施しました。

骨髄検査では分化(成長)段階の白血球が多数認められ、白血病細胞などはいませんでした。そして再生不良性貧血のように血球がほとんど見当たらない、ということもありませんでした。

どういうことでしょう?

こういう時は経過が重要です。白血球低男さんは2ヶ月前にくも膜下出血を発症されており、けいれん予防目的にカルバマゼピンを内服していました。そしてよくよく採血結果などを見てみるとカルバマゼピンを内服して4週間後あたりから徐々に白血球数は少なくなっていました。

そう、薬剤性無顆粒球症です。

メルカゾールなどが有名ですがカルバマゼピンもよく原因となります。

治療は原因薬物の中止です。

白血球低男さんのカルバマゼピンは予防投与であったこともありそのまま中止することにしました。すると白血球数は回復し、抗生剤により発熱も3日ほどで治りました。

そろそろ退院の日程を相談しようと訪室したところ白血球低男さんが

「先生も見てくださいよ、この部屋からの景色はいいですよ」

と窓際へ歩いて行ったのでその後ろについていくと

!?

びっくりしました。

そしてびっくりするあまりに

春一番が二発、病室を駆け抜けて行きました。

白血球低男さんは気付いていなかったようです。僕のおならに、そしておそらく自分のおならに。