悪性リンパ腫におけるPET-CTの新たな3つの評価法–MTV、TGL、MH–

どーも、ビール戦士からハイボール使いに転職してしまいそうな、ちゃんまんです。

今回はPET-CTについてです。

PET-CTとはFDGという光るブドウ糖を注射し、全身のCTと掛け合わせ癌の病変部位をあぶり出すという検査です。

癌細胞など増殖が盛んな細胞はブドウ糖をエネルギー源にしていることを利用してます。

ただし炎症を起こしている白血球もブドウ糖をエネルギー源にしているので肺炎などの感染症との区別がつかないのが難点です。また、通常でもブドウ糖をエネルギー源としている脳や心臓も光って見えてしまいますので注意が必要です。

PET-CTにより大きくなっていない癌でも病変の評価ができますし、CTではわからない浸潤臓器もわかります。

また、癌の広がりを把握することにとても役に立ちます。

リンパ腫においてはステージの評価には欠かせません。

そして最近、新たに3つの評価方法が出てきています。

MTV、TGL、MH

聴き慣れない略語ですね。それぞれ簡単に説明します。

①Metabolic Tumor Volume:MTV

光っている体積の値を算出します。ブドウ糖が多く使われている場所は強く光ります。その光の強さはSUVという値で表されます。MTVは一定のSUV以上の部位の体積を算出します。閾値は癌の種類によって違うみたいです。腫瘍量を表しています。

②Total Legion Glycolysis:TLG

MTV に平均 SUV をかけて計算します。腫瘍の代謝量を表すとされています。

③Metabolic Heterogeneity:MH

光っている部位の中で光り方が弱い部分がないかを表します。計算方法は難解ですが、均一性を表しています。値が高ければ腫瘍内での活動性は高く、値が低ければ活動性が高い細胞は一部であると考えます。光り方が弱い部分は壊死などを反映していると考えます。

Blood (2018) 132 (2): 179–186.

PET-CTで光っているといっても光り方やその分布によって捉え方が変わるということです。

つまり例えるならサッカーでうまいFWがいるとします。そのFWがデカくてうまいのか、速くうまいのか、それともキックが正確でうまいのか、といった感じでしょうか。ひとくちにうまいといっても色々な側面があるということです。

ここで論文紹介

スイスのSAKK38/07というびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)を対象としたstudyを別の角度からretrospectiveに見直した報告です。もともとは21日毎に実施するRCHOPを14日毎にすると成績が良くなると期待したが結局は変わらなかった、というstudyです。

なので患者はRCHOP14で治療したDLBCLの方。初診時のPETを使用しMTVとMHを組み合わして予後不良群を見つけよう、というstudyです。

結果は以下。

Blood Adv (2020) 4 (6): 1082–1092.

MTVが多くとMHが高ければ有意に予後は不良です。逆にMTVが少ない、もしくはMHが低ければ予後は比較的良好である、という結果です。

つまりデカいだけのFW、速いだけのFWならなんとかなるがデカくて速ければ太刀打ちできない、ということです。

本当にそうなのでしょうか。

この結果からはデカくて早いFWには通常のDFでは太刀打ちできないということを表しています。つまりこちらももっと強いDFを投入すれば勝ち目はあるということです。

ただ、どのようなDFを投入すれば良いのかはまだ分かっていません。つまり強い化学療法をするのか、別の抗癌剤の組み合わせにするのかなどは今後の検討課題となります。

このように研究とは

予後不良因子を見つけて

新たな戦略を立てて

救える患者さんを増やす

ことが繰り返されています。

我々はその大きな流れを構成している一部であり、その大きな流れは巡り巡って我々の元に戻ってきます。つまり、僕はまさに自動流しそうめん機に投入されたそうめんなのですね。

違うか。

春一番が二発ー無顆粒球症と発熱性好中球減少症ー

どーも、持ち前の明るさを活かしたい、ちゃんまんです。

世間は新型コロナウイルスで持ちきり、家での待機が余儀なくされており、気分も閉塞気味ですね。

ここで先日僕が体験した春のそよ風についてのお話です。

白血球 低男さん(仮名)いう60歳台男性の白血球が300/μLということで血液内科へ紹介となりました。白血球数の正常値は3000-8000/μLであり、かなり少ないです。

普段、白血球はウイルス、細菌、真菌(カビ)などと戦っています。300/μLまで減ってしまうと感染症にかかりやすくなってしまいます。白血球には種類がありますが、細菌と戦うのは主に好中球です。好中球が少ないと、具体的には500/μL以下の場合は、細菌感染を発症してしまうと重篤になる場合が多いです。なので好中球が少ない状態で発熱していたら、点滴の抗生剤が投与されることが多いです。

具体的には好中球500/μL以下+37.5度以上の発熱=発熱性好中球減少症と言います。白血球が少ないだけでは特に大きな問題はないですが、熱が出てしまうと速やかな抗生剤治療が必要です。

白血球低男さんの好中球は100/μLで38度台の発熱を認めており、発熱性好中球減少症として抗生剤投与を入院となりました。と同時に白血球が減ってしまった原因検索をすることとなりました。

白血球はなぜ減ってしまったのでしょう。

白血球は骨髄、つまり骨の中で造られています。なので白血球が減ってしまった時はまず骨髄できちんと白血球が造られているかを確認しなければいけません。骨髄では赤血球と血小板も同時に作られます。

骨髄で白血球が作られない状況とは、例えば白血病細胞が骨髄を占拠して白血球を作ることを邪魔している場合です。白血病細胞以外にも胃がんなどの癌細胞が骨髄を占拠している場合も同じです。

もしくは何らかの原因で白血球が作れなくなる病態がある場合もあります。再生不良性貧血などがそうです。貧血という名前なのに白血球が減るの?と思われるかもしれませんが、実は再生不良性貧血は白血球、赤血球、血小板が減ってしまう病気です。またいつか紹介したいと思います。

なので骨髄検査を実施しました。

骨髄検査では分化(成長)段階の白血球が多数認められ、白血病細胞などはいませんでした。そして再生不良性貧血のように血球がほとんど見当たらない、ということもありませんでした。

どういうことでしょう?

こういう時は経過が重要です。白血球低男さんは2ヶ月前にくも膜下出血を発症されており、けいれん予防目的にカルバマゼピンを内服していました。そしてよくよく採血結果などを見てみるとカルバマゼピンを内服して4週間後あたりから徐々に白血球数は少なくなっていました。

そう、薬剤性無顆粒球症です。

メルカゾールなどが有名ですがカルバマゼピンもよく原因となります。

治療は原因薬物の中止です。

白血球低男さんのカルバマゼピンは予防投与であったこともありそのまま中止することにしました。すると白血球数は回復し、抗生剤により発熱も3日ほどで治りました。

そろそろ退院の日程を相談しようと訪室したところ白血球低男さんが

「先生も見てくださいよ、この部屋からの景色はいいですよ」

と窓際へ歩いて行ったのでその後ろについていくと

!?

びっくりしました。

そしてびっくりするあまりに

春一番が二発、病室を駆け抜けて行きました。

白血球低男さんは気付いていなかったようです。僕のおならに、そしておそらく自分のおならに。

覚悟の話、駄文–イギリス首相ジョンソンの新型コロナウイルス対策–

どーも、現在22時ですが昨日飲みすぎたためまだ二日酔い、ちゃんまんです。

新型コロナウイルス、大変ですね。みなさまの健康をお祈りします。

ここでイギリスの首相、ジョンソンさんのスピーチを聞いてみましょう。

英国放送協会(British Broadcasting Corporation:BBC)の日本版ホームページからの引用です。だいたい10分くらいです。

https://www.bbc.com/japanese/video-52013808

なんかすごいですね。

見えない殺人鬼に対してみんなで戦おう。2人以上の会合は禁止、警察の出動も辞さない。でも1日1回は健康のために外出を許可します。

どのような方針が正しいだとかは僕はわからないですし、日本がどうすべきかなんてはこのブログでいうつもりはありません。

この動画をみて感じたのはすごい覚悟です。いわゆる凄みが伝わってきます。

現在の悲惨な状況に対して、犠牲を覚悟で乗り越えようとする意志を感じました。

覚悟を持って物事をやり遂げる。刺激をもらいました。

僕はこの3月で3年間働いた病院を辞めて4月から大学院へ進みます。その送別会が昨日ありました。状況が状況なので僕含めてレジデント3人と研修医1人の4人で行ってくれました。

美味しい和食の1軒目、ワインバー的な2軒目、食べログの評価は両方3.5程度でした。素晴らしいチョイスです。最後ということでたっくさん飲みました。ビール、ハイボール、ワイン、ハイボール、、、最後の飲み会ということを噛み締めて覚悟を持って飲みました。そしてがっつり二日酔いです。

そんなのは覚悟では無いですね。

はい、とりとめのない話ではありますが本日はここらへんで!

採択されました!

どーも、にわかラグビーファンのちゃんまんです

ASH(アッシュ)に演題が採択されました。

ASHとは

つまりアメリカの血液学会です。日本では日本血液学会がありますようにアメリカにも学会があって一年に一回の集会があるのです。世界一で一番大きな血液内科学会です。

演題内容はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫において治療経過中のsIL2Rの値が予後に影響を与える、というものです。

臨床研究です。ちょっと最近個人的にはまっている臨床研究です。

自施設からは初めての採択で、自施設のデータで、医師5年目で世界で一番大きな学会に採択されました。

すごくない?

そう書くと凄いです。でも実際やったことは140人くらいのデータ取ってEZRにガシャポンしただけです。データ取るのに時間は取られましたが基本はそれだけです。緻密なストラテジーも高尚な知識もなしです。誰でもできます。

逆にいうとやらないと損なんじゃないかと思うわけです。僕なんかが遠く及ばない賢い人たちにかかればどんどんと進められちゃいます。日本は特に臨床研究が遅れているようで海外の人たちがどんどんと進めているのかと思うと悔しい気持ちになります。

僕に臨床研究を教えてくれた先生が言ってました。臨床研究はやる気さえあれば誰でもできる、スタートする時期なんか関係ない、と。

その口車に乗って初めてみたらASH採択ですよ。すごくない?

僕をきっかけに臨床研究を始める人が出てくれると嬉しいですし、そう思ってもらえるよう頑張りたいと思います。

実際僕が今回ASHにチャレンジしたのも同期が昨年ASHに採択されたのをとても悔しく感じたことが大きかったです。そして今年は採択!すごくない?

と、偉そうなことを書きましたが実は論文を一編も書いてないですしまだまだです。精進します。そして色々教えてくれた方にこの場を借りて感謝します。ありがとうございました。

今回はなんとなく徒然なるままにupしてみました。ちょっと途絶えていましたが定期的にupしていこうと思ってます。ではでは。

よっしゃぁぁ!?ASH採択されたぁぁぁぁぁあああ!!12月にオーランド行きまぁぁぁす!!

濾胞性リンパ腫における早期再発について-POD24って何?-

どうも、最近筋トレ体操にはまっています(見る専)、チャンマンです。

先日Webセミナーで悪性リンパ腫についての講演がありました。その中でPOD24についての話題があがったので紹介させていただきます。

まず、濾胞性リンパ腫について-軽めに-

100種類くらいある(!?)悪性リンパ腫のうちのひとつです。

特徴としては

・悪性リンパ腫の中で2番目に多い(20%程度)
・低悪性度
・化学療法への感受性は良い
・再発を繰り返す
・治癒を目指すには同種造血幹細胞移植が必要

などが挙げられます。のんびりとしてるけど再発はちらつき続ける、というイメージでしょうか。

低悪性度とは勢いがないという意味でして、治癒率と関係ありません。ややこしい。

50%生存期間(=100人患者さんがいた場合で、50人目が亡くなってしまうまでの期間)は20年程度とされています。
つまり濾胞性リンパ腫にかかってしまっても半分以上の方が20年以上は生き続けることができるということです。

しかし残念ながら化学療法だけでは治癒には至らず再発を繰り返します。そして最後には治療抵抗性となり命を落としてしまいます。

悪性リンパ腫の中で一番多いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Diffuse Large B cell Lymphoma:DLBCL)がスパッと6割くらいが治るのとは対照的です。

なので再発を繰り返す方は治癒を目指して同種造血幹細胞移植を実施します。しかし移植には治療関連死という大きな壁があり勇気と覚悟が必要です。

濾胞性リンパ腫と診断された方の治療方針はひとまず限局期か進行期かで変わります。

造血器腫瘍診療ガイドライン参照
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/index.html

限局期か進行期かは以下の図の通りです。

NPO法人日本統合医療推奨協会
https://www.togoiryou.com/gan/rinpasyuu/

横隔膜を挟んで濾胞性リンパ腫がいる、もしくはリンパ節とリンパ節以外の臓器(肺や腸など)に濾胞性リンパ腫がいると進行期です。

進行期でもだったら化学療法!というわけではありません。進行期でも腫瘍量が少なければ無治療経過観察だってあります。Watchful & Wait (注意深い観察)という選択肢があります。

造血器腫瘍診療ガイドラインを改編(赤丸でチャンマンが囲んだ)
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/index.html

ね。

濾胞性リンパ腫はやはり勢いがありません。進行期でも腫瘍量が少ない場合(=低腫瘍量)に限りますが、大きくなるまで待っていても、急いで治療を始めても変わらないとされています。どっしり構えてのんびり付き合っていくってイメージがやっぱりあります。

早期再発というありがたくないイベント-POD24-

基本的にゆっくりとのんびりタイプのリンパ腫です。しかし早期再発した場合は危機的状況である可能性が高いです。そのイベントをPOD24(Progression Of Disease within 24 months)と言います。現在濾胞性リンパ腫において最も強力な予後因子、つまり未来を占う情報と言われています。

最初の報告はおそらくこれです。
J Clin Oncol. 2015;33(23):2516-2522.

Patient:濾胞性リンパ腫ステージⅡ以上、リツキサン+アントラサイクリン含む化学療法を受けた患者588人
Intervention:後ろ向き研究のためなし
Comparison:診断から2年以内の再発した群(Early POD) vs それ以降の再発した群(Reference)
Outocome:再発から死亡までの期間

上記のようにPOD24群はnoPOD24群と比べて5年生存率は50%vs90%と明らかに不良でした。

現在ではPOD24の定義が治療開始からとされていることが多いです。

POD24の意義?

早期再発が悪いんでしょ?

それって当たり前じゃないですか?

だから何?私に何しろっていうのよ

はい、そうなんです、そうなんですけど!それをデータとして、事実として認識することが重要なのだと思うのです。

なぜでしょう?

濾胞性リンパ腫は何度もいうように息の長いリンパ腫です。しかし治りにくいという克服すべき性質を持っています。さらに罹患率も多いということから治療成績の向上は僕たちの義務であり試練でもあります。

となると治療成績の向上のために新しい治療戦略が必要となります。そのためにはその新しい戦略を有効というために、今までの治療と比べて優れているということを証明しなければいけません。

治療の目標は生存期間を延ばすことでです。新しい治療戦略で生存期間が延びた、と証明しなければいけません。しかし濾胞性リンパ腫の場合は半分以上の人たちが20年以上生きることができます。なのでその新しい治療戦略が本当に有効かどうかわかるのが20年後とかになってしまう。ということです。

20年!

20年!

一人の赤ん坊がちょうど成人するまでの期間!

日が暮れちゃいます、なんなら時代が回ります。

そんなのんびりやってる場合ではありません。

そこでPOD24の出番ではないでしょうか。POD24を起こしてしまうと生存期間が短くなる、ということはPOD24が起きなければ生存期間が長くなる、と置き換えてしまってもいいのではないか。ということです。

つまり

本来なら生存期間を短くする特徴はなにか、その特徴のある人たちに別の治療法を実施することで生存期間を伸ばせるのではないか。

という新しい治療戦略の開発法が

POD24を起こしやすい特徴はなにか、その特徴のある人たちに別の治療法を実施することでPOD24を防ぐことができるのではないか。

とすることで結果が出るまでの期間を大幅にカットし、新しいアイデアをどんどん試すことができます。中には日の目を見ない研究もあるでしょうが、様々なアイデアがすぐに評価可能となり、成績のスピーディな向上が期待できます。もちろんPOD24による評価は間接的であり最終的には生存期間で確かめなければいけませんが、答え合わせ的な要素が強くなると思います。

すごいですよね。尊敬しちゃう。

ということでPOD24はただ早期再発が悪いということを証明しただけでなく研究の開発スピードの向上に影響を与えている素晴らしい概念と言っていんじゃないでしょうか。

現在はPOD24を使ってガザイバの有効性、初診時PETにおけるSUVmaxや血中DNA量についての報告がされています。また、紹介できればと考えてます。

今回は以上です。ではでは

CAR-T療法について、基本から最近の話題まで簡単に-まずはさわりから-

どーも、去年の夏服が入りません。チャンマンです。

先日ALL(急性リンパ性白血病)の研究会に行ってきました。CAR-Tについてのお話がメインであり、ちょっと巷で話題となっておりさわりだけでも説明していきます。

CAR-T(カーティ)とは

Chimeric Antigen Receptor-Modified T cellsの略でカーティと呼ばれています。おそらく血液内科領域において、ここ数年で最も熱く、さらにあと数年は熱いままであろうトピックです。

先日ノバルティスから出されたキムリア®️が33,493,407円で薬価申請されたことで話題になった治療法です。すごい額ですね。

国内初のCAR-T細胞療法・キムリアが薬価収載 新薬11製品もhttps://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=67510

どのような治療?

方法は以下です。

1,患者さんからT細胞を採取

2,半端ない技術でそのT細胞をガン細胞を攻撃するように改造

3,改造T細胞を患者さんに戻す

4,改造T細胞がガン細胞をやっつける!

ノバルティスホームページにも解説されています。
https://www.kymriah.jp/pt/car_t/index.html

いわゆる細胞療法です。

効果は凄まじいです。従来の治療法では4割程度しか助からない再発ALL(急性リンパ性白血病)の患者さんが8割くらいに効果があるとされています。

ただ、その長期予後(治るかどうか)については議論のあるところです。

Emily Whiteheadという少女

Emily Whiteheadという少女がいます。Googleで画像検索をすると多数の彼女の写真が出てきます。

可愛いですね。

有名な子役タレントですか?

いいえ違います。

彼女は何を隠そうCAR-T療法の恩恵を受けた一人です。

7歳で白血病と診断され寛解を獲得したが再発する、というのを2回も繰り返し化学療法のみでの治癒は困難と判断されCAR-Tへの臨床治験への参加を決意しました。治療は奏効し、現在CAR-Tの威力を表すために再発無しです!とのボードを毎年掲げて白血病患者さんへ希望を与えています。

ちなみにこの論文のPatient1です。
N Engl J Med 2013; 368:1509-1518

CAR-T療法の威力は繰り返しになりますが凄まじいです。白血病以外のガンにおいても注目されています。おそらく向こう数年かはガン治療のメインストームとなり、世界中で盛り上がっていくでしょう。しかし薬価からもわかるように莫大な研究費が必要となります。彼女はガンサバイバーとして世界の患者のために戦ってくれています。本当に尊敬します。可愛いなんて月並みな感想を言った自分が恥ずかしいです。でも可愛いですよね。

副作用について

効果が凄まじいですが副作用も凄まじいとされています。

この図はCAR-T療法において副作用が起こる可能性のある臓器の説明です。

Blood 2016 127:3321-3330

全部やん?全臓器やん?

いろいろなところでいろいろなことが起こりますが主に2つが問題とされています。

①サイトカイン放出症候群(Cytokine release Syndrome:CRS)
②神経毒性

・サイトカイン放出症候群

改造T細胞が体内で活性化し、標的となるがん細胞への攻撃が起こります。その活性化を促す目的で出される体内にサイトカインが過剰に放出されてしまいます。T細胞は元気になるのですがそれがあまりに元気になり、他の細胞も巻き込んで発熱や血圧低下、胸水などによる呼吸不全が起こってしまいます。試験にもよりますが発症頻度は20%〜100%(!!)となっています。初期の試験においては半数の患者さんがICUでの循環・呼吸管理が必要となってしまっています。

重症度をまとめてみました。(以前に発表したスライドです。色味どうです?)

サイトカインであるIL6が原因とされており、ヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体であるトシリズマブの投与が必要となります。タイミングとしてはGrade3程度が目安なようです。具体的には5L/min以上の酸素投与、もしくは昇圧剤が2剤以上必要な場合です。ただ、トシリズマブの投与は抗腫瘍効果が落ちてしまうという懸念がありましたが最近の報告では抗腫瘍効果は落ちないんじゃないかという意見が主流なようです。なのでややトシリズマブの早めの使用が推奨されつつあります。さらに効果発現が乏しい場合はステロイドの使用も積極的に考えます。12時間以内に効かない場合は使ってみることを考えるそうです。

・神経毒性

頭痛、幻覚、麻痺、不眠症、振戦、めまい、傾眠、不安と症状は多彩です。基本的に可逆的とされており原因としては実はCAR-T特有というよりCD19との関連が疑われています。

治癒?

今現在はCAR-T療法単独で治癒にいたるのかもしくはやはり同種造血幹細胞移植が必要かどうかははっきりしません。CAR-T療法実施前の微小残存病変(MRD)が陰性な場合は移植が必要でないかもとの意見が多そうです。

品質の向上や再発に対する戦略(主にCD19エスケープに対する)によってさらなる効果が望めそうです。

いったん以上です。とりあえずおさわりだけです。また世代の話や品質の話など基礎的なお話もどこかでできればと考えています。

何か気になるところなどあればお気軽にコメントなど下さいませ。

TAIL UP?

管理人紹介

どーも、チャンマンです。

まずは自己紹介です。職業は血液内科レジデント、関西の市中病院で働いています。大学卒業年度は2014年、出身は関西、小学校からサッカーをしており今もフットサルをやるのは好きです。

研修医として市中病院と大学病院を1年ずつ、3年目からは現在の病院で血液内科として勤務しております。

結婚3年目、可愛い奥さんと二人暮らしです。

ビールが好きです。スーパードライ派でしたが、最近北海道のサッポロビール博物館へ行ってからというものもっぱら黒ラベル派となっています。大人階段。

モットーはなんとかなる、一人っ子B型が見事に表れています。

当ブログでは、血液内科である僕が難解と思われがちな血液疾患についての解説であるとか、最新の知見であるとか、僕の日常であるとか、などをupできればと考えております。

上機嫌でいきます!以後お見知り置きを!